人はなぜものを作るのか・なぜわたしは本を作るのか

創作活動に関する主観的見地からの考察

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もくじ

はじめに

X(そういうSNSがある)をご覧のみなさんはご存じかと思いますが、わたしはいま「年内に同人誌を出すぞ!」と意気込んで活動している最中です。

……。

なんかもう導入とかめんどくさいので全部飛ばしていいですか?←いいよ←了解!

ということで、いまのうちに即売会に行ったことも本を作ったこともない状態の気持ちを記録に残しておこうと思います。

しかし、なぜ?

結論から書くと、わたしが本を作るのは「即売会に行ってみたいから」です。本来は作品を頒布するのが目的で即売会は手段であるはずなのに、それが逆転している。どうしてこのようなことになったのかは2024年の年末にさかのぼります。

――C105直前の2024年12月28日、深夜1時。酩酊状態のわたしはVRChatのフレンドが毎週開催している定例イベント(実際には「内輪のみんなで集まって、お酒を飲みながら楽しく話そう」くらいの雰囲気ですが)でフレンドたちと雑談していました。

「……でも最近は事後通販とかもあるし、わざわざ会場まで行くモチベーションはあんまりないですねー。人は多いし、体力も使うし」

「即売会ね~~、わたしも行ってみたいんですよね」

「学生のうちに一度『人は創作物にここまで本気になれるんだ』っていうのを体験しておきたい、というか。こういうのってその後の創作活動の原動力になると思うんですよ」
↑酒が入ると熱く持論を語りだす面倒な人すぎる

「たしかに、年を取ってくると即売会に行くのもしんどくなってきますからね。今のうちに行っておくのはいいと思いますよ」

「だったらサークル参加がいいんじゃないですか?並ばなくても入場できるから楽ですよ(註:このとき話していた面々はほぼ全員がサークル参加経験者だった)」

「エーッ、いきなりサークル参加はハードルが高いんじゃないですか?わたし、同人誌作ったことすらないですよ」

「大丈夫ですよ、本なんてコピー用紙に印刷して折ったらできるんですから」

「うわー懐かしいなぁ。私も友人の家でコピー本作るのを手伝った覚えがありますね」

(中略。このあとしばらく同人活動の楽しそうなエピソードがつづく)

「……それに、規模にこだわらなければ即売会そのものは地方でも結構やってますからね」

「まあでも、せっかく行くなら首都圏で開催されるような大きめのやつに行きたいですね。とはいえいきなりコミケに行くのはなあ……」

「むしろコミケのほうがいいと思いますよ。参加方法とかの知見がネットで探しやすいので」

「ああ、そういうのもあるんですね。じゃあもうコミケに行くしかないか~」

――かくして、その場の勢いでC106を目標に本を作ることが決定したというわけです。

しかし、なにを?

本を作るからには、先に内容を決めなければなりません。当初はイラスト集でも出すかと思っていたのですが、C105の開催中に、わたしの考えを大きく変えるポストがX上に投稿されます。

設営完了!西み40bでお待ちしております!みんな来てね〜 500㎖(@0500mL)氏のポスト
アイマスエキスポ→1時間で完売

おれ→コミケは5倍持っていったらまあ余るかな♪

結果→1時間で完売

500㎖(@0500mL)氏のポスト

……すげえ!!人は創作物にここまで本気になれるのか!!!

「篠澤広に物理学を解説してもらう合同」――またの名を「篠澤物理」。企画段階から噂を耳にしてはいましたが、まさかこんなことになっていたとは。制作側も読者側も尋常ではない人数が動き、結果として「篠澤物理」というひとつの現象を作り出している。そこにはたしかに、わたしが想像していた即売会ひいては同人活動の熱気がありました。あと202ページはさすがに分厚すぎてワロタ。わたしが3DCGの資格取ったときの参考書(159ページ)より厚いですよ。

また、篠澤広Pとして担当の新たな可能性を見たという点でも衝撃的な出来事でした。萌えキャラが出てくる本も学術的な内容の本も個別のジャンルとして見れば星の数ほどあれど、萌えキャラが物語の中で学問を説くという形でふたつのジャンルを混合できるとは思ってもみませんでした。キャラクターがTeX\TeXを話すことある??

――さて、そうなってはもはや、取るべき行動はひとつしかありません。わたしも篠澤広さんに学問を説いてもらう合同誌を作る。そしてコミケに出る。その瞬間から、それが2025年のわたしの目標となりました。

とはいっても、500㎖氏と何の関係もなければ物理学徒でもないわたしが勝手に篠澤物理2(ツー)を作るわけにもいきません。なにかわたしにもお話を書けそうな分野はないか、と考えた末に思いついたのが「完全理解!篠澤広の機械学習・数理最適化ゼミ合同」でした。

合同誌の題字。ちゃっかり2巻目以降の刊行も想定している
合同誌の題字。ちゃっかり2巻目以降の刊行も想定している

あの篠澤広さんに、機械学習や数理最適化について教えてもらう。おもしろくないわけがない

篠澤広さんの「特技は数学と物理」というプロフィールを拡大解釈して数字が関連するありとあらゆる学問のプロと言い張るという無理をしてはいますが、先輩同人作家のみなさんに聞いたら「同人誌は自由だから大丈夫だよ~」とのお言葉をいただいたので、きっと大丈夫でしょう(責任を転嫁するな!)

しかし、誰が?

さあ、合同誌を出すとなればまずは寄稿者集めから……。といきたいところですが、ここに大きな落とし穴がありました。先輩同人作家のみなさんから内容についてのアドバイスをいただいたのと同時に「ニッチな専門分野を扱う本はウケやすいよ~」と背中を押してもらったのですが、合同誌でニッチな専門分野を扱うということは、それだけ寄稿者が集まりにくいということでもあります。篠澤広さんと機械学習・数理最適化と物語の書き方のすべてに熟知がある人を探すともなればなおさらです。そこで、寄稿者集めのためソフトウェア開発の現場を参考にライター&メンターモデルを考案しました。

ライター&メンターモデルの構造は以下の通りです:

  • ライター(寄稿者)は篠澤広さんと物語の書き方についての知識さえあれば、技術的な知識はなくてもよい。
  • メンター(技術考証チーム)は技術的な知識さえあれば、物語の書き方についての知識はなくてもよい。
  • ライターはメンターと2人1組になり、物語のあらすじを考える。
  • 担当ライターの執筆作業が始まったら、メンターは(執筆者を問わず)上がってくる仮原稿のレビューに移る。
  • 添削と修正作業が終わったら、主宰が本原稿にマージする。

このモデルの採用により寄稿のハードルを大幅に下げることに成功し、募集開始から1週間で5名の方から寄稿のご応募をいただきました。最終的には10人くらい集めたいな~と思っていることを鑑みるとかなりいい調子です。1月末まで寄稿者を募集しているので、これを読んでいるみなさんの中に「小説/漫画に自信があるぜ!」または「機械学習/数理最適化に自信があるぜ!」という方がいたらぜひご応募ください。

しかし、いかに?

合同誌を出すとなると考えなければならないのが入稿フォーマットの統一です。文芸系の本であればWordやGoogleドキュメントのテンプレートを全員に配るだけで済みますが、学術系の、しかも数学系の本となると話は変わってきます。数式が出てくるからです。

今回の合同誌ではライター&メンターモデルを採用しているため、数式が出てくると非常に困ります。なぜなら:

  • Wordの数式機能は貧弱すぎる
    • 加えて、そもそも全員がWordを使える環境にあるとは限らない
  • Googleドキュメントではそもそも数式が扱えない
    • いちおうLaTeX\LaTeXの記法で数式が書ける拡張機能はあるが、試してみたところ実用に耐えるものではなかった
  • ライター陣は全員が全員技術者ではない
    • したがって、全員にいまからLaTeX\LaTeXを覚えてもらうのは申し訳ない

この事実に気付いたときは「もはや絶体絶命なのか!?」と思いましたが、すんでのところでWebブラウザのページ印刷機能を使えば任意のWebページをPDF化できることを思い出し、remarkKaTeX\KaTeXを組み合わてMarkdownとKaTeX\KaTeXが使える文書作成システムを再発明することで事なきを得ました。

自作の文書作成システムでレンダリングされたページの例
自作の文書作成システムでレンダリングされたページの例

おわりに

ほんとうはもっと詩的な内容にしたかったのに、誘引力に負けて技術記事になってしまいました。まあいまの気持ちを言葉にしておくという目的は達成できたからいいか。

「人はなぜものを作るのか」に言及し忘れたせいで微妙にタイトル回収に失敗している気はしますが(読者への練習問題とする)、疲れたのできょうはこのくらいにしておこうと思います。

ではまたいつか、別の場所で……